《小説》 十字架の陰陽師―キリシタン陰陽師・賀茂在昌―

戦国から桃山の世にかけて活躍した「キリシタン陰陽師」の一代記!

戦国から桃山の世にかけて、「キリシタン陰陽師」が活躍した。その名は、マノエル賀茂在昌《かものあきまさ》。
 そんなあまりにも格好良く出来過ぎた、架空歴史・歴史ファンタジーものの漫画かゲームのような、魅惑的な夢物語じみた話だが、そうではない。実在の人物である。
 ――と言い切ってしまうのは、実は歴史学的には妥当ではない。がしかし、その可能性は確かに存在する。

 同時代の記録を多数残した宣教師ルイス・フロイス他のイエズス会士達が書き残したキリシタン文献に、公家にして天文学の名家の出である「Manoel Aqui Marza」・「Aquimasadono」という人物が「都で初めてのキリシタン」となり、伊予(愛媛)を経て豊後府内(大分市)に滞在、などという記録がある。
 また日本側の文献には、天正年間から慶長初期・織田信長と豊臣秀吉が天下人として君臨したいわゆる安土桃山時代に、「賀茂在昌」・「あきまさ」という陰陽師が都で活動し、秀吉の創建した「京大仏」方広寺の地鎮祭に携わったことなどが記されている。
 この「Manoel Aqui Marza」と「賀茂在昌」が同一人物であるという確証は、未だ得られていない。仮に同一人物であったとしても、史料に乏しく、その人物像は謎に包まれている。

 史実の「Manoel Aqui Marza」・「賀茂在昌」についての歴史学的研究は、他の専門的文献に当たっていただきたい。
 これから綴る物語は、それら歴史学的記録・研究の様々な断片を元に、「キリシタン陰陽師・マノエル賀茂在昌」という、実在した「かも知れない」人物を、存在した「かも知れない」歴史的架空設定と物語的空想で多分に補って再構築し描き出した、ノンフィクションめいた「歴史創作小説」である。

―本文「序文」―

《あらすじ》
第一部:戦国大名大内義隆の支配する「西の都」山口に住む、朝廷陰陽師の落とし子である宇治丸少年(のちの賀茂在昌)。共に育てられた少女・広とともに伴天連来航を目の当たりにして興味を惹かれるも、時あたかも山口の乱に巻き込まれ、伴天連の助けによって命からがら難を逃れる。二人は父・勘解由小路在富の跡を嗣ぐために京の都へ上り、やがて結婚する。

第二部:長じて立派な「キリシタン陰陽師」となった賀茂在昌は、西洋天文学を学ぶため豊後へ出奔、多くを学び帰洛し、安土桃山の世で活躍する。九州に残り修道士となった長男メルショル、陰陽師を嗣いだ次男在信など、数奇な運命を辿る在昌一家。しかし、時代の波に翻弄され、キリシタン禁制とともに歴史の舞台から消えてゆく…。

「陰陽師」といっても、悪霊・式神などファンタジー的な要素は絶無…暦造りに情熱を注ぐ「朝廷の天文学者」という、本来の陰陽師を描いたもので、ギリギリまで史実をベースにしています。一時期話題になった『天地明察』みたいな作品です。

 2017年6月9日 起筆
 2018年4月23日 擱筆
  鳥位名 久礼

『十字架の陰陽師―マノエル賀茂在昌』(本編PDF)

賀茂在昌関係年譜(PDF)

賀茂在昌関係系図(PDF)

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